対北議長声明

7月11日2010年

議長声明という形で、韓国哨戒艦沈没事件について国連安保理が意志を示した...というか、意志を示せなかったというか。
日韓主要紙の社説を読み比べてみた。

まず、北朝鮮がらみでオモシロいのはなんたって産経で、こないだは「これはテロだ」と騒いでいたので今度はどうかと思ったら、今度は「北の不法な軍事攻撃であり」と、少しは理屈がわかってきたようだ。
もっとも「北朝鮮の犯行と断定できず、具体的な責任追及や制裁措置も含まれていない」から「極めて不十分といわざるを得ない」という。
で、どうして断定できなかったのかというと、中露が無責任にも北の犯罪的行動をかばったから怪しからんという。
そして最後は「日本政府も独自制裁など可能なあらゆる手段で臨むべきだ」と産経らしい牽強付会を吹きまくって大向こうウケを狙う。

次に朝日はどうかというと、北朝鮮を非難する論調というより、「そんなことしてたら、自分のためにならないよ」という説教調。
あいまいな議長声明の意味については、「中ロも賛同して北朝鮮を実質的に牽制する議長声明をまとめたこと自体には意味があった」と、まあ、それなりに評価する。
で、中露の抵抗については「北朝鮮をかばうためではない。緊張を高めては国益にそぐわないからだ」と、これはまっとうな分析だと思う。
そして「厳しく認識すべきは、自らに向けられた国際社会のきわめて冷たい視線」とし「国際社会の支援や協力なしに苦境から脱することなどできまい」と、いたずらっ子に支援が欲しけりゃいい子にしてなさい、という調子で結んでる。
そういう問題じゃないと思うんだけどな。何となくいい子っぽい社説だけど、これは完全にポイントを外してると思う。
国際社会の支援にしても、それが日本の支援ということなら、もう北朝鮮は日本の支援なんてあてにしてないし、中国と韓国の支援があればそれでいいんだから。

少しはまともな新聞社かなと思うこともある毎日だが、この問題に関してはろくでもない文章を載せてる。何か悪いものでも食ったのかしらん。
まず名指しの非難や責任追及ができなかったことについて、「この程度で北朝鮮の今後の暴挙を封じられるのか」とガツンと一発。で、事件とは無関係という北の主張に留意するという記述が入っていたことにふれ、中国が安保理で粘り抜いた『成果』が歴然としていると、中国を攻撃。じゃ、韓国や日米の面目丸つぶれかというと、「不満ではあるが一定の成果を得た」と取り繕ってみる。
そして突然北朝鮮のデノミの失敗、後継者問題などをあげて、「不測の事態への十分な警戒が必要である」と、何だかわけのわからん結論を導いている。
新聞の売上が落ちるのは、町の評論家がそこらのブログに書き散らしてるような程度の記事しか載せないからだと思うんだよね。

読売は、毎日と似たような論調だが、まあ、読売ならそんなもんだろう。
外交的な駆け引きで攻撃の主体が明記されなかったので不満があるとし、中国やロシアも協力しなきゃいけんと言う。そして最後に「まず日米韓の3か国が有事を想定した協議を始める時ではないか」と、何だか毎日と似てるけど、有事が好きな読売らしい結論。
結局さ、日本の保守って、何とかして戦争を煽ろうとしているようにしか思えない。

じゃ、この事件では最初から北朝鮮の仕業と決め付けて強力なキャンペーンを張ってきた韓国保守三紙はどうかというと、朝鮮日報中央日報は意外にもかなり冷静だ。当初から予想されていたということもあるのだろう。何となく、「オリンピック金メダルの夢は破れたがよく戦った」、みたいな論調である。連日の北朝鮮攻撃で疲れたのかな。
しかし東亜日報は憤懣やるかたなしという調子である。安保理は北朝鮮が犯人だとわかってるのに、攻撃の主体を明示しなかったのは実に残念、イランの核開発や中東事態などの利害で不十分になものになったと悔しがる。さらに対北朝鮮決議案を採択に野党が反対したとか、参与連帯が安保理議長に天安艦の調査結果に疑問を提起する文書を発送したとか、国内にも矢を放つ。
そして政府には「北朝鮮支配層を実質的に圧迫し、体制変化まで引き出すことができる高度な経済戦」「北朝鮮の民主化に向けた戦略的行動」を要求するという、なかなか勇ましい立場を表明する。

では韓国進歩紙はというと、なぜかハンギョレは社説を載せていないのだが、京郷新聞の社説は気に入った。社説は声明のあいまいさについて「懸案の性格と国際政治の現実を勘案すれば十分に予想できた」と冷静に受け止め、声明が「早く直接対話と交渉を再開し、平和的手段で朝鮮半島の問題解決を」と呼びかけている部分に注目、議長声明は国際社会が対立ではなく対話に切り替える努力を要求しているのだとして、安保理の声明を要求してきた韓国としてもこの部分を誠実に遂行すべきだと言う。
そして韓国政府が声明の趣旨に反してこの声明を対北圧力に使おうとすれば問題はさらに難しくなると警告する。
さらに、この声明は北朝鮮に体面を保たせ、北朝鮮が韓国への強硬路線を変化させる余地を与えたと読む。この余地を最大限に活用し、朝鮮半島の平和を実現するために南北が賢明な判断するように求めている。

読売、産経みたいに「やっつけちまえ」というような調子は論外としても、毎日みたいに「不測の事態に備えろ」みたいなのも、結局、朝鮮半島での武力衝突を憂えるような顔をしながら実は期待してるようなもんで、困ったもんだ。朝鮮半島で何が起きても、どうせ日本は大した被害はないと思ってるんだろう。
その点、韓国紙は割と現実的だ。本来好戦的で当初は報復攻撃なんかを煽っていた朝中東も、この問題をあまりゴリゴリやると本当に武力衝突が起きかねないと考えるようになったのか、それだけは絶対に避けたいという内心がにじみ出てる。何しろ何かが起きたら戦場になるのは自分たちが住んでいる土地であり、勇ましく戦って国のために名誉の戦死をするのは自分かもしれず、兄弟かもしれないのだから。一番過激な東亜にしても、武力制裁はもちろん、経済制裁といった言葉ではなく、「高度な経済戦」、「戦略的行動」という漠然とした控え目な表現をしている。
ぼくは、京郷の社説が正論だと思う。強硬派にしてみれば、違法な武力攻撃の責任はどうするんだということになるかもしれないけど、平和の構築って、そういう忍耐の積み重ねなんじゃないかと思う。

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