北朝鮮の魚雷
韓国の軍艦を沈めたのは北朝鮮の魚雷だった、という。本当かどうかはわからないけど、とにかくそういう結論。
こういう事件になると、産経新聞がオモシロい記事を書く。
今度はどんなオモシロいことを書いてるかというと、たとえば「乗員46人が犠牲になった大型艦に対する夜間の闇討ちはテロである」だってさ。もう、なんでも「テロ」。
KAL爆破みたいな事件は民間人が犠牲になったテロと言ってもいいけれど、今回は軍隊が軍艦を沈めたのだから、休戦協定違反の軍事行為であって、テロとは言えない。
こんな初歩的な常識を知らない産経じゃないはず。じゃあ、何で「テロ」と書いてるかというと、日本では「テロ」と呼ばれている北朝鮮による日本人拉致とからめて世論を誘導しようとしてるんだろう。休戦協定違反の軍事的な衝突という枠組みで北朝鮮非難の国際世論ができてしまうと、「テロ」の枠組みで議論される拉致問題がすっ飛んでしまう。だから今回の事件も「テロ」とすることで、拉致問題も押し込みたいということなんだろう。
気持ちはわかるよ。拉致問題については、日本の右翼が空気を読まずに自分たちの立場だけをゴリ押ししたもんで、まったく進展しなくなってしまったからね。拉致被害者を救出すると叫びながら、その救出の経路を自分たちで塞いでしまうという大失策を糊塗し、政治的な活路を開くために、今回の北朝鮮の挑発行為は願ってもない事件だった。ただ、問題は、これを「テロ」にしておかないと、拉致がすっ飛んでしまうということだ。だから常識も無視して強引に「テロである」なんて書いて世論を誘導しようとしているのだね。産経の愛読者はともかく、国際的には通用しないけどね。今回の件を口実に、また米韓の努力を邪魔するようなら、ほんとに日本は国際協議に入れてもらえず、ますます拉致事件の解決は遠のいてしまう。結局、拉致被害者やら韓国の軍艦を道具に使って北朝鮮を攻撃してるだけじゃん。
産経や右翼にとっては、しかし、それでいい。国際的に通用しなくても、拉致や今回の事件の解決につながらなくても、とにかく「テロ!テロ!テロ!」と叫んで国内の反北世論を盛り上げることができさえすれば。
産経の、そして右翼どもの本当のターゲットは、事件の解決なんかじゃなくて参議院選挙だろう。
外国人参政権をはじめ、右翼の嫌がる各種の政策を進める民主党の足を引っ張って、安倍・麻生時代の再来を夢見る日本の右派勢力は、ただ自分たちが権力を取り戻すことだけを考えて、北朝鮮の暴挙を口実に世の中を扇動する。品性というものがまったくない連中である。
もっとも、北朝鮮を口実に使うのは、日本の右翼ばかりじゃない。実際、韓国の右翼の興奮ぶりは、産経どころの比じゃない。
韓国もやはり6月2日の地方選挙を前に、この国家に対する攻撃という事件を政権の求心力を高める道具に使っている。朝鮮日報をはじめとする右翼新聞は、連日特ダネ、スクープで煽り立てている。もちろん、政府はこうしたマスコミに連日、特ダネ、スクープの種を提供しているからだけど。
四大河川工事だとか、失業問題だとかで批判の多い李明博政権だけど、北朝鮮の魚雷は軍艦ばかりでなく、そうした民生分野での批判と、国民の理性を粉微塵に粉砕するだけの破壊力を持っている。
冷静になれ。北朝鮮の乱暴な協定違反は、それはそれとしてしっかり追求して極東の安定を考えなければいけない。しかしこの事件に事実以上の意味を付与してはいけない。
魚雷一発で、理性を吹き飛ばされてはいけない。
新しいコメントの投稿