韓国映画 - ストライキ前夜
今や伝説となったチャンサンコンメの1990年の作品。
簡単に言えば労働プロパガンダ映画だ。労働者よ、立ち上がれ!
現在の韓国の労働運動には、軍事政権時代から続いている御用労働運動(?)と、80年代後半から盛んになった民主労働運動の2つの流れがある。後者は資本と戦って労働者の世の中を作るんだという、どっちかというと社会主義的な政治指向性を持つ労働運動で、韓国の民主化とともに主に大企業の労働者を組織して大きくなり、現在では韓国最大の労働組合組織、民主労総になっている。もちろん民主労総のような戦闘的な労働組合は、当初は危険な団体としてむちゃくちゃな弾圧を受けてきた。民主労総が法的に労働組合としての地位を確立したのは90年代の末になってからだ。
とにかく、80年代末から始まった民主労組運動は、それまでまともな労働運動がなく、オルグやストライキの経験のない労働の現場に「労働運動とは何か」「労働者はどのようにして自分の労働を守るのか」ということを知らせなければならなかった。そんな宣伝の道具として映画が使われた。この映画を作ったチャンサンコンメや、メディアクト所長のキム・ミョンジュンなどがやっていた労働者ニュース制作団は、この時期に多くの闘いの映像を制作している。もちろん、当局はこれらの映画を上映禁止処分にする。ところが、上映禁止とか発行禁止ってのは、とてもいい宣伝になる。当局が禁止しているんだから、きっと本当のことが描かれているんだろうと思ったかどうかは知らないけれど、この「ストライキ前夜」も全国で何十万という人々が見たという。とにかく、まだ韓国では民主労総ができる前、全労協の時代だ。
映画の他にも、芝居や歌、詩などがそうした宣伝に使われた。詩や歌は、発禁になっても人から人へと詠み継がれ、歌い継がれて広がっていく。この映画の中にも、そんな歌がいくつも登場する。
この映画は、労働運動についてのプロパガンダ映画でもあるのだが、組合作りのマニュアルでもある。
どうやってオルグするのか、何に気をつけなければいけないのか、会社はどのような手段に出てくるか、それにどう対抗すればいいのか…。
20年前の独立映画で、ろくに制作費もかけられなかっただろうけど、細かいところまでとても良く作り込まれている。ラストシーンは、水戸黄門なみのありがちなパターンながら、「よぉ~しッ! ガンバレ!」という感じで感動しちゃう。労組の映画はやっぱりこれじゃないとね。
舞台は1987年、労働者大闘争があった時期の町工場。町工場といっても、何十人も工員がいる。
貧しい工員を雇い、犬のように働かせている。
その工場では、一度、ある人物が労働組合を呼びかけたことがあったが、すぐにつぶされてしまった。
「人間らしく暮らしたい」と思う労働者たちが、「去年のようなやり方ではだめだ」と、綿密な計画を立てて労働組合を作ろうとする。会社はあらゆる手で組合を潰そうとする。労組破壊専門家「ジェームズ・リー」を雇う。ちなみに、このジェームズ・リーは現代重工労組の破壊を担当した実在の人物の名前だ。
ストーリーはフィクションなのだろうけど、実際のエピソードから構成されているのだろう。組合建設と弾圧の話といえば、どこでも同じようなことが繰り返されるもんだ。労組設立マニュアルとしては、今でも通用する。
だから映画の流れも、だいたい説明しなくても想像できると思う。それでもいろんな登場人物をうまくからませて巧みに展開していく。面白かったのは、20年前の映画だけど、女性労働者の権利をしっかり言わせているところ。確かにあの時代は、男も女も、労働者も学生も、みんな闘っていたけど、「女も黙ってちゃいけない、闘わなきゃいけない」というメッセージを発しているのは、やっぱりすごいんじゃないかとおもう。どこの組合だったんだろう。
これはぜひ一度、レイバーネットなんかと一緒に上映会とかやりたい作品だ。
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