韓国ドキュメンタリー - 送還日記
ちょっと古いけど、キム・ドンウォン監督のとにかく有名なドキュメンタリー。
過酷な転向工作に耐え抜いて非転向を貫いた老人たち。もうそれだけですごい。
この映画について、ぼくなんかが分断の悲劇だ、なんて書いても白々しい。
度重なる拷問で身も心もぼろぼろになった老いた元工作員たちは祖国への絶対の信頼を失わない。
転向を拒否し続けさせたそのエネルギーは、低劣な拷問技術者たちへの反感だったというのは、そうだろうなと思う。日本でも、日の丸・君が代に対する「転向」を強要する人々がいて、「転向」を拒否し続ける人々がいる。低劣な連中に転向を強要されても、決して彼らの思う通りにはならないんだよ。
彼らが歌う金日成将軍の歌。素直に彼らがまだ金日成を崇拝している証だなんて思っちゃいけないんじゃないか。日本の元帝国軍人の老人たちが集まれば、当時の軍歌を歌う。だけど、彼らが軍歌の歌詞通りの価値観を持ちつづけてると思っちゃいけないように。
転向した昔の仲間との再会。おそらく、許すとか許さないとか、そういう次元の話ではないんだろう。日本でも、戦時中の転向について多くの考察がある。
彼らは支援者たちにも、容易に心を開かない。もしかすると、彼らの思いやりかもしれない。所詮、理解してもらえないと思ってるのかもしれない。
韓国の家族から、実母との面会も拒絶される。家族たちは、彼のためにどれほどつらい思いをさせられたかを想像させる。
拉北者。今でも北は拉北者なんていない、と言っている。そしてこの映画では特に言及されていないけれど、日本人の拉致に関与した元工作員も登場する。家族を引き裂いた彼らにも北の地に家族がいる。
ある家族は北の非転向元長期囚と会うことさえ拒絶し、別の家族は何としてでも北に拉致された肉親との再会を望む。
北に帰った彼らは、国家的な英雄として宣伝の道具にされる。映画のセットみたいな、こぎれいなアパート。
北から送られてきた映像の中の非転向元長期囚たちは、あの人間臭いおじいさんではなく、祖国への忠誠を貫いた誇らしい老兵士なのである。北からの映像なんだから、当然なんだけど。
この映画の中には、しばしば「統一」という言葉が出てくる。「統一したらまた会える」。
朝鮮半島で今も分断が続く理由はかなり複雑で、そう簡単には解決はできそうもない。非転向長期囚の送還は、この複雑な問題を解こうとする試みのひとつだったのだけど。
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