韓国映画 - 飛べ、ペンギン

2月24日2010年

「私たちの生涯最高の瞬間」のイム・スルレ監督による四話オムニバス。2009年度の国家人権委員会シリーズというのか、そのへんの支援で作られた映画。
これまでの国家人権委員会の映画は、いろんな監督にそれぞれ短編を作らせていたのだけれど、今回はイム・スルレ監督が1人で4本を作った。

第1話は、教育に熱心な母親の話。第2話は、酒の飲めないベジタリアン男の話。第3話は、妻と娘を海外生活に送り、ひとり韓国で暮らす父親の話。そして第4話は、妻に離婚を突きつけられた初老の男の話。これらの話は独立したエピソードでもあるのだけど、それぞれが緩くつながっていたりもする。
これまでの国家人権委員会シリーズよりも、エンターテインメントの要素が多くて楽しめる。イム監督、やるなー。

で、これらのエピソードは、どれも韓国で社会問題になっている話題。

元々教育熱心なお国柄で、それはいいんだけれど最近は、というよりもうずいぶん前から、過度な塾通いで子供たちは疲れ果て、親は過大な教育費で疲れ果てている。小学生、中学生でも深夜0時過ぎに帰宅するケースも珍しくない。確かに地下鉄に乗っていると、夜の10時とか11時とかに子供の姿を見かけたりする。高額な教育費を負担できる家庭は、良い大学、良い会社に入って高給取りになり、教育費が負担できない家庭の子供は劣悪な労働条件に甘んじなければならず、社会の二極化、貧困の世襲を増大させている。

韓国社会は酒社会。とにかくよく飲む。飲まなきゃ飲まされる。最近はずいぶんマイルドになったというけれど、それでも飲まなきゃ仲間じゃない、みたいなところはあるらしい。らしい、というのは、ぼくなんかは向こうに行くと外国人なので、最初から仲間じゃない。まあ、それでも何度も韓国に足を運んで、片言の韓国語でも話すと心理的な壁は低くなるんだが。
日本でもベジタリアンは結構苦労するんだけれど、韓国ではベジタリアンはさらに苦労する。厳格なビーガンだと、何も食えないかもしれない。そしてそれ以上に、仲間ってのは同じ飯を食うもの、という観念があるらしく、会食の席で1人だけ別のものを食うというのは異様な風景だ。さらに議論好きの韓国人、いつだったか、韓国で労働運動関係のイベントがあったとき、オーストラリアのベジタリアンが食事の時に「人間というのは、そもそも肉を食べるようにできているんだ」とか議論をふっかけられて苦笑していた。このとき、ぼくが韓国語と英語の通訳みたいなことをやってたんだけど、途中で通訳するのやめたくなった、ほんと。

韓国人は、流暢な英語に強いコンプレックスを持っている。だから無理してでも子供を米国やカナダ、オーストラリアなどの英語圏に留学させようとする。その結果、父親は一人韓国に残って、せっせと仕送りのために働くことになる。で、留学して何を勉強したんだか、英語はできても、わけのわからん変な韓国人になってしまうのだ。
この英語コンプレックスの問題は、第1話の加熱教育にも出てくるし、以前の国家人権委員会の映画「6つの視線」でも、舌を切って英語の発音をネイティブっぽくする話なんかがあった。グローバル化の時代に、英語教育が重要だということに異議を唱えるつもりはないけれど、まあ、韓国の英語コンプレックスは本当に異常だと思う。流暢な発音なんかより、話の中身の方が大切なんだが。

熟年離婚は、日本でも事情は似ている。儒教道徳の強い韓国では、特に地方に行くと男尊女卑の傾向が日本よりもやや強いような気もする。女が道端でタバコを吸ってたら、おじいさんにいきなり殴られた、なんて話を聞いたんだが、これ、本当に珍しいことではないらしい。とにかく、一家の家長のオヤジは、絶対的な権威者だそうな。
幸か不幸か、ぼくがつきあってる韓国人は運動がらみばっかりなので、あまりそういう家庭内の伝統的な男尊女卑の姿を見ることはないのだけれど、たとえば街の食堂なんかにいくと、おばさんがてんてこまいしている間、主人は新聞なんぞを読みながら客と雑談してたりとか、そんな風景を目にすることがある。
ま、家庭内の男がダメな存在なのは、韓国に限らず日本でもアジアでも欧米でも、おそらくアフリカでも同じだろうけど。

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