国旗・国歌が嫌いな人

7月5日2009年

埼玉県の知事という人が、「国旗・国歌が嫌いな教員は辞めるしかない」と答弁して、これを支持するメールが殺到したんだって。

レイバーネットの記事で読んだんだけど、知事は「私は日本という、この国がですね、世界の中でもですね、誇るべき素晴らしい国だということを常々、教育の中でしっかり教えていくべきだ」と考えているんだそうで、一度、どのあたりが素晴らしいと思ってるんだか、聞いてみたい気がする。
どこの国にも「わが国は世界でも特に誇らしい国だ」と思い込んでる人はいっぱいいるのだけど、どこの国の話を聞いても、その国のどのへんが特別すごいんだか、よくわかんないのだ。日本だと、1000年以上続いた天皇がいる、こんな国は他にない日本の誇りだ、とかいう人がいるけど、それってそんなに誇るようなことなのかな。世界的な文明の発祥の地だとか、世界的な宗教を生んだとか、民主主義を育てたとか、そういう方がすごいような気がするんだが。ああ、そうだ、他の国が持っていない憲法九条という先進的な条文を持つ平和憲法の国だった。それなら確かに日本は世界でも特に誇らしい国と言えるのかもしれないね。

それはともかく、しかし「国際社会の中において、自国を尊敬する人が他国でも尊敬されるというルールがあります」とか、この知事さんは言っているんだけど、そんなルールなんてない。あるとすれば、外交官のルールだとか、既得権層のエリート集団だとか、政治家のルールだとかでしょ。
で「自分の国を愛せない人は、他国でも尊敬されません」に至っては、バカ丸出しで、ふつう、世界のどこに行っても、どこかの外国人が「自国を愛しているかどうか」なんて誰も気にしないよ。「オレは日本を愛してる」とか「愛してない」とか叫んでも「あ、そう。それで?」とか言われるだけ。あるいは「オレも自分の国が大嫌いさ」とかで意気投合しちゃったりするけどね。
一度、この知事さんに聞いてみたい。北朝鮮から逃げ出してきた人を軽蔑するんですか? ビルマの反政府勢力はミャンマーの国旗を尊敬しないから、スーチー女史は尊敬できないと言うのですか? 存在しないルールを勝手に作るなよ。
国際的に見ればどこの国にだって、必ず国旗や国歌を拒否する集団は存在する。そして、少なくとも民主主義が存在する国なら、国旗を否定しようが国歌を否定しようが、それはその人の主張として認められるのが「国際的な常識」ってやつなんだが。

まあ、「国旗・国歌をきちんと掲げ、また国歌を歌うということをですね、するのは当然のこと」というのは、国家の立場からすれば当然でしょう。しかし「自国を愛することが当然だから」という理由ではない。それは「国家が統治するために必要だから」であって、統治者連中の論理と民衆の論理をすり替えるなよ、と言いたい。

しかし、ここまでは統治者が人民を統治するための一般的な手法の話で、統治者がそう思うんだったらそう思えばいい。そう思わない人は反対すればいいんだから。そして、実際に反対している人がいて、統治者の命令を拒否する人もいるわけさ。

ところが、それに対して「そんなに嫌だったら辞めたらいいんじゃないのと私は思っています」と言うのは、これはもう論理も道理も恥もへったくれもない。国家の論理を貫徹しようというのは政治家の発言かもしれないけれど、「嫌なら出ていけ」というフレーズは、これはもう政治家の発言ではなく、単なる右翼、国家主義者の発言だ。この発言には反対するとか何とかじゃない。国旗・国家を受け入れろというのとはレベルが違うどころか、まったく異次元の発言であり、民主主義を否定する決して許せない発言だ。
なぜ国旗・国歌に反対する人が出て行かないのかを考えてほしい。この国が好きだから、この職場が好きだから、でしょう? この国を良くしたい、この職場を良くしたいからでしょう?
自分の職場を愛せないような人は、どこの職場に行っても尊敬されないと思わない?
そもそも、だよ、嫌だから出て行くようないいかげんな気持ちで働くような人だったら、命令の拒否だとか、反対だとか、そういう面倒くさいことすると思う?

ぼくは現行の「国旗・国歌」を認め、敬意を払う人がいてもいいと思うし、歴史的な経緯を考えればとても「国旗・国歌」は認められないという人は、どんどん主張すればいいと思う。その主張が間違っていると思えば、反論できないような論理で納得させればいいだけの話なのに、理屈では納得させられないから辞めさせてしまえというのは、とても正気の沙汰じゃない。

ついでに言えば、この手の話が出てくると必ず何もわかってないネット右翼どもが「日教組」とか叫ぶんだけど、今の日教組は国旗・国歌を正面から否定するような力は全然ない。国旗・国歌を拒否する教員を支援することさえできない。
バカなネット右翼の連中は、日教組、日教組と叫んでいれば楽しいのかもしれないけれど、だいたい今、国旗・国歌に突っ張ってる教員は、組合なんかアテにしないでひとりで仲間を集めて頑張ってるんだよ。
まさに個人の思想・信条と、国家の論理の衝突という問題なのに、それを体制と反体制みたいな古めかしい図式でしか理解できないところがネット右翼のバカさ加減なんだな。そして幻の反体制に対して、体制側に自分を置くことで「勝ち組」の一員であることを確認しようとする悲しさでもある。

くだらない国家の常識なんてものは、帝国主義時代の幻想に過ぎず、くだらない体制・反体制の図式は冷戦時代の幻想でしかない。
国家だの体制だのというくくりを忘れて、生活する民衆の視点から世の中を見なけりゃ、この複雑な時代は理解できないと思うのだよ。

まさに、おっしゃる通りですね。

まさに、おっしゃる通りですね。

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