南京! 南京!

6月20日2009年

レイバーネット日本のサイトに南京虐殺をテーマにした「南京! 南京!」という映画の全編が中国のサイトで見られるという記事が載っていた。中国人の監督が日本軍の視点で南京虐殺を撮ったというのでいろんな意味で中国でも日本でも話題になっている映画なんだそうだ。敏感なテーマだけに、日本でも中国でも、上映が難しいとかで、特に日本では配給会社も決まっていないため公開の可否は不明だとか。

インターネットで見られるというサイトの映像をちょっと見たんだけど、中国語の字幕なので英語字幕付きのファイルを探して、結局、英語字幕で見てしまった。

聞いた話では、何とかという賞も受賞したし、「いい映画だ」ということだったんだけど、ぼくには何を言いたいんだか、よくわからなかった。
抵抗、愛、自己犠牲、狂気、苦悩、恐怖、友情、ヒューマニズム、軍国主義、そんな記号がちらちら見え隠れするのに、それが迫ってこないという感じ。中国では「日本の弁護をするのか」という反応があったというが、弁護するような論理も希薄だ。たとえば、何で一般の市民を虐殺しなけりゃいけなかったのか、それに対して便衣兵の存在というだけでは「ああ、そうですか」で終わっちゃうんじゃないかな、と。強姦や慰安所の関係にしても、結局、風紀が乱れておる、みたいな理由で終わっちゃってるし。

この映画を撮った陸川という監督は、日本側の資料をたくさん読んだという。そんな感じだ。戦闘シーンなんかもそうなんだけど、ディテールが妙にリアルで、そういうエピソードもあったんだろうなあというシーンは多い。でも、ディテールがリアルなだけに、たとえば目に見えない「日本軍」という、ある意味、主人公的な組織の性格が感じられない。そこを描いちゃうと問題になると監督が考えたのか、あるいはあえて組織を描かないことで兵士の視点、市民の視点を強調したかったのかなとも思うけれど、そうだとしたら違うと思う。
特に南京のような状況では日本兵もまた誇り高い皇軍の一員であり、また、人間であり、組織の一部として、自分の行動を選択せざるをえないだろうし、特に憲兵や下士官ならなおさらだろう。日本軍が手当たり次第にやっかいな中国人を殺す非人間的な組織で、日本兵はそれを当然と思って鉄砲をぶっ放し、太鼓にあわせて機械のように兵士を踊らせる組織だというんだったら、結局、それまでのいわゆる中国製反日映画のフレームを越えられないんじゃないかと思う。
といっても、別にぼくは中国製反日映画とやらをたくさん見てるわけでもないから、ただ「そう思った」というだけなんだけど、あるいは日本のいろんな反戦映画を見慣れているせいかもしれない。極限的な状況の中で追い詰められた兵士が、平然と非人間的な行為を行うようになっちゃうとか、そういうパターン。それで、この映画は、そういうパターンの映画ではなかったのに、「日本側の視点」という文句につられて、どこかぼくはそういうパターンを予期してこの映画を見てしまったので、ちょっとがっかりした、ということなのかもしれない。

それにしても、この南京虐殺というテーマは、それだけで話題になっちゃうというのはすごいと思う。たぶん、「なかった組」の連中は、この映画にも「デッチ上げだ」とか文句をつけるんだろう。あるいは「反日だ」という不可解な理由で映画館を脅迫したりする連中もいるんだろう。
個人的には上記のような理由であまりおもしろいとは思わなかったけど、途中で飽きちゃうような映画でもないし、「南京虐殺はデッチ上げ」と思ってる人にはどっちみち気に入らないだろうけど「蛮行シーン」も思ったよりマイルドでこの程度なら十分あり得るというレベル、別に日本で上映したら日本が滅びるというもんでもなし、見る人に反日思想を植え付けるような部分もないし、これが上映できないとすると、むしろ南京虐殺そのものよりも、「上映不可能」という事実のほうが怖い。

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