コーヒー

2月5日2009年

世の中のややこしいモノを数え上げればキリがないが、ややこしいモノの飲み物部門があるとすればおそらくコーヒーはベスト3ぐらいには入るだろう。ちなみにややこしい飲み物のトップは断然酒である。

しかし、酒の場合、カクテルを除けば自分が手をかける余地は少ない。その点、コーヒーは違う。
豆の産地によって味が違う。「モカ」と言ってもシダモだとかハラーだとかマタリだとかいろんな種類がある。たぶん、コーヒーの木ごとに味が違うんだろうし、年によっても味が違うんだろうし、保存の状態によっても違うんだろう。悪い豆は手作業で取り除くのだが、どこまで丁寧に選別するかも重要だ。
で、これを焙煎するわけだが、これがまたややこしくて、同じ豆でも焙煎次第で全く味が変わってくる。さらに焙煎した後も刻々と味が変わる。
さらにブレンドという過程が加わるともう、手がつけられないようなややこしさになる。ブレンドの組み合わせの数は無限大だ。
以前、焙煎に失敗して「こりゃ、飲めない」と思うような豆をエイヤッとばかりに全部ごちゃまぜにしたら、ぼくが作ったブレンドの中で一番おいしいブレンドができてしまったということがある。元の豆は香りも味もおかしかったのに、ブレンドにしたらどこかに飛んで行ってしまったはずの味と香りが生き生きと復活したのだから、これには驚いた。味と香りは若干薄かったけれど、バランス的にはほとんど専門店のブレンドに近いものだった。二度と再現できない幻のブレンドである。
そして、抽出というプロセスが加わる。ドリップだの、プレスだの、エスプレッソだの。湯の温度、むらしの時間、抽出のスピード。ここではグラインドも大きな要素で、細かく挽くか荒く挽くかで違う。
そして、最後にミルクを入れたり砂糖を入れたりという段階を経て、ここでまた味はドラスティックに変わる。
これだけ変数があれば、どんなコーヒーが飲めるかなんて、その時の運のようなものなのだが、そこがコーヒーの面白さ。コーヒーの専門家になるとこれを何とか安定しておいしいコーヒーにしてしまうのだからすごいと思う。しかし、自家ブレンドの妙を知ってしまうと、専門家が淹れたおいしいコーヒーをおいしく飲むだけではつまらなくなってしまう。ろくな設備も知識もない一介のコーヒー飲みが、どうすれば自分の好みの味ができるのか、無限大の変数とその組み合わせにチャレンジするのは、限りなく徒労に近い試みではあるのだが、前述のような奇跡に近いブレンドができてしまったりするからやめられない。

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